前回の世界のクリスマスに続いて、今回は各国のお正月事情についてお話しをしていきましょう。新年を幸せな1年にしたいという願いに国境はありませんが、その願い方は国によって様々です。大晦日から元旦にかけて、日本同様に各国独自の色々な行事が行なわれています。中には、日本人からするととても風変わりなものもあるのです。

新年を迎える気持ちは全世界共通だけど…

クリスマスの時にもお伝えしましたが、お正月の迎え方も各国の風習や文化によって異なってきます。食事から行事まで、国によってその過ごし方は千差万別です。

世界各国のお正月

風習や文化、宗教的な意味合いから、新年の迎え方はそれぞれに違います。日本人であっても興味深い迎え方があるなら、お正月に海外旅行をして実体験するのも楽しそうですよ。

【フランス】フランスでは、家族で高級シャンパンと豪華な食事をとるというのが一般的です。そしてお正月に欠かせないのが「ガレット・デ・ロア」という伝統菓子。ホール型のパイの中にアーモンドクリームがたっぷりと入っていて、さらに“フェーブ”という小さな人形がひとつ入っています。切り分けたお菓子の中に“フェーブ”が入っていれば、その人は幸運の持ち主となります。日本のおみくじと似ていますね。

【イギリス】お正月よりもクリスマスが盛大なイギリスでは、新年は静かに迎えるイメージがありますが、ロンドンのテムズ川で打ち上げられるカウントダウンの花火大会は世界的に有名です。また、大晦日の夜には「Auld Lang Syne」というスコットランドの民謡を歌います。実はこの曲、「蛍の光」の原曲なのです。

【スイス】スイスの村では“ジルベスタークロイゼ」という伝統行事を行ないます。大晦日には精霊に扮した人たちが、新年の挨拶をするために家を順番に回って行きます。木の枝や葉っぱ、悪魔や鬼のお面、カラフルな衣装を身につけるなど、様々な種類の精霊たちがヨーデルを歌いながら村を歩きます。これは古い年の悪を払い、幸せな新年にするためです。

【アメリカ】アメリカでは11月下旬の感謝祭からクリスマスまでが1年の中で最大の行事です。このためにお正月は比較的静かに過ごします。お休みも元旦のみが一般的で普段の暮らしに戻る感じです。とはいえ、大晦日のニューイヤーイブは別。各地でカウントダウン・イベントが行なわれて、夜通しの盛り上がりを見せます。アメリカは広大な国なこともあり、地域によって行事や料理も変わってくるのも特徴です。

【ロシア】宗教的な意味合いからクリスマスを1月7日に行なうロシアでは、クリスマスよりも新年を迎える方を大切に考える人が多いです。といってもドンチャン騒ぎではなくお正月を家族で過ごすのが一般的で、豪華料理とシャンパンでお祝いをします。こんなところもアメリカとロシアで異なる部分といえそうです。

【インドネシア】インドネシアではイスラム教徒が多く、断食明けには故郷へ帰省して家族と共に過ごします。元旦には髪やひげを整えて新しい服を着て、親族で集まります。そして大人が子どもに、日本でいうお年玉である“アンパオ”を配ります。2日になると家族での国内旅行が始まります。インドネシア全体がこの風潮なので、交通機関の予約が大変混み合うそうです。

【中国】中国の場合、他の国とは違ってお正月は旧暦に習って春節ということになります。春節は1月下旬から2月中旬の間であり、毎年その期間は異なります。この時期になると1週間ほどの休暇を取って故郷に帰り、家族でお祝いをします。料理は餃子や白玉入りのスープである「タンエン」が代表的です。盛大に爆竹を鳴らして獅子舞が踊る、春節こそ国中を上げたお正月なのです。

【韓国】韓国も中国と同じように、お正月は旧暦に習って1月下旬から2月中旬の間となります。この旧暦の元旦を“ソルラル”といって、新年を迎える本番となります。各家庭では祭壇を設けて数十種類の食べ物をお供えし、先祖の霊をお迎えします。お正月料理は「トックッ」という、日本のお雑煮のような汁ものを頂きます。中国や韓国などは、他国と比べるとご先祖を大切にした行事としての色合いが強い、といえるかもしれません。日本でも見習った方がいいかも?

これほんと? ちょっと変わったお正月の風習

最後に、お正月のちょっと変わった風習を紹介しましょう。日本人からすると「どんな意味があるの解らない!」と思ってしまいますが、その国ではとても大切な慣わしなのです。逆に日本の風習も海外からすると「何それ?」って思っているかも? お正月にその国に行って実体験してみては?

※派手な色のパンツや服を着る/ブラジル、メキシコ、ボリビアなど
南アメリカのブラジルやメキシコ、ボリビアなどでは、大晦日の夜から赤や黄色のパンツ、白い服を着るなどの風習があります。これは新年に運気を掴むために行なう風習で、年が明ける前に着なければ効果がないといわれています。ちなみに、赤のパンツは“愛”、黄色のパンツは“金銭欲”を意味するそうです。

※窓の外にバケツで水をかける/プエルトリコなど
プエルトリコなどでは、大掃除が終わった後に窓から外に向かってバケツで水をかけます。これは家の中にある旧年中の古い気を洗い流して新年を迎える、という意味があるそうです。もし外を歩いている人に水がかかっても、この時ばかりは許してもらえそうですね。

※隣家のドアにお皿を投げる/デンマークなど
お正月になると、隣の家のドアにお皿を投げるのがデンマーク。普通なら大げんかになりそうですがこの場合、お皿を投げられた家には1年間幸福が訪れるといわれていて、投げられたお皿が多いほど良いとされているそうです。ご近所同士仲が良くないとできない風習ですね。

※人形や顔写真を燃やす/エクアドルなど
大晦日に等身大の人形を家の前に置いて燃やすのがエクアドルなどです。また、顔写真を燃やすという風習もあり、これは“燃やす”ことで過去を処分して1年間の厄を払う意味があります。

※丸いものを食べる、身につける/フィリピンなど
“丸いもの”は縁起が良いとされるフィリピンでは、年末に丸いフルーツなどを食べたり、水玉などの丸いドット模様の衣服を着ます。ただしルール的にはアバウトで、楕円形でもよしとされているそうです。

※古いパンを家の壁に投げる/アイルランドなど
年末年始に古いパンを家の壁に投げるのがアイルランドなど。古いパンを投げることで家の中の邪気を追い払って福を招き、新年も食糧に恵まれるようにという願掛けになるといわれています。日本でいう節分の豆まきに近い風習ですね。

※新年になる瞬間にブドウを12粒食べる/スペインなど
スペインなどでは、新年の0時になる瞬間にブドウを12粒食べる風習があります。ただし、0時の鐘が鳴っている間に12粒を食べきる必要があるとか。ブドウ12粒は1年12ヵ月を表わしていて、全部食べきれば1年間幸せに過ごせるといわれています。近年ではこの風習用に12粒入りの缶詰などもあるようです。

※1日に食事を7回する/エストニアなど
1日に食事を7回することで、新年に7人分の力を蓄えられるといわれているのがエストニアなどの風習。料理の種類はベイクドポテトやソーセージなどのハイカロリーでボリュームのあるものなので、7回食べるのはかなり大変そう…。ご先祖のために多少残しておく、というのもアリだそうですが、食べ過ぎで身体を悪くしそうです。