1年に一度だけのビッグイベント、クリスマス。日本でもお馴染みのこのイベントは、世界でも同じように行なわれています。ですがその過ごし方や風習などは、国によって様々です。今回は代表的な各国のクリスマスについてお話ししていきましょう。

風習や文化によって違う世界のクリスマス

クリスマスとは、元々は約2000年前にイエス・キリストが生まれた日を祝う、要は誕生日のことです。また、キリストの誕生日に関する記録が残されていないことから正確な日付は不明ですが、ローマ教皇ユリウス1世が12月25日に決める布告を出したことで確定したといわれています。元はキリストの誕生日として始まったクリスマスですが、その他のお祭りなどと混ざり合い、各国の風習や文化で独自のクリスマスが確立、現在では世界6大陸のすべてで開催される一大イベントとなったのです。

各国のクリスマス

それぞれの国で独自の祝い方をするクリスマスですが、日本との大きな違いのひとつとしていえるのは、クリスマスを過ごす相手かもしれません。日本では恋人と過ごすのが定番ですが、世界では“家族と過ごす”ことが多いです。家族や親族が集まるその中に大切な人も加わって過ごす、という風景は映画やドラマでもよく見受けられますよね。どちらかというとみんなで集まってパーティをするのが海外のクリスマスなのです。

【アメリカ】アメリカのクリスマスといえば、ニューヨークのロックフェラーセンターとホワイトハウスのクリスマスツリーが有名です。特にロックフェラーセンターでは25mもある巨大なツリーを背景にしてスケートを楽しむ様子が風物詩ですが、ツリーは各家庭でもクリスマスを祝う必須アイテム。プレゼントはツリーの下に置くのが常識です。アメリカではキリスト教徒が多いことから家族や親戚と過ごすのが一般的。ただし大半の家庭ではクリスマスケーキの概念がなく、家庭ごとにいろいろなスイーツを用意します。もちろん七面鳥も!

【イギリス】イギリスのクリスマスは帰省の日という雰囲気が強く、家族みんなで過ごすのが一般的です。ただし24日の早くから交通機関は全面ストップ、25日にはショップやレストランも一斉休業となります。そして26日になると“ボクシング・デー”として街中で大バーゲンセールが始まります。イギリスには、伝統のクリスマスケーキとして「クリスマスプディング」があります。たっぷりのドライフルーツとナッツ、ラム酒、小麦粉を混ぜ合わせた、アルコール風味の強いケーキで、半月ほど前から作り始めます。

【フランス】クリスマスはフランス語でいうと“ノエル”で、誕生という意味です。伝統的にカトリック系が強いフランスではクリスマスはとても重要なイベントで、クリスマスツリーへのこだわりも強く本物のモミの木があちこちで売られます。パリでは11月から年明けまで、クリスマス・イルミネーションが街中を覆い尽くします。そしてクリスマススイーツは「ブッシュ・ド・ノエル」。丸太や薪、切り株をイメージしたケーキはあまりにも有名ですよね。

【ドイツ】ドイツでは街中がクリスマス・マーケットで盛大に賑やかになります。各地で開催される期間限定市場は、大都市だけでも約2500ヵ所以上という規模。中でも“世界一有名なニュルンベルク”“世界最大のシュトゥットガルト”“世界最古のドレスデン”が3大クリスマス・マーケットとして有名で、ワインやソーセージを口にしながら屋台を巡ります。ドイツのクリスマススイーツは伝統菓子の「シュトレン」です。ドライフルーツやナッツが練り込まれたこのスイーツを、クリスマスを待つ間にスライスして少しずつ食べる習慣があります。

【ロシア】ロシアのクリスマスは12月25日ではなく、年を明けた1月7日に行なわれます。これはユリウス歴という古い暦からきていて、現在でも民間行事はこれに従っています。そしてロシアではサンタクロースの代わりに“ジェド・マロース”という、衣装が青くてヒゲの長い冬のおじさんが登場します。孫娘を連れ、杖をついて歩いて移動するのが特徴です。クリスマススイーツはロシア正教の儀礼食である「クチャー」。これはハチミツ、ドライフルーツ、ケシの実、小麦などを使ったポリッジ(お粥)です。全体的に、他国とは毛色の違うクリスマスといえます。

【オーストラリア】南半球のオーストラリアでは、12月25日は1年の中で最も日が長くなる夏至の頃です。夜が短い夏の季節ということもあるのか、都市のイルミネーションが控えめなのがオーストラリアのクリスマスの特徴ですが、クリスマス休暇にはアウトドアでのバーベキューが定番です。また、クリスマスで欠かせないのが「パブロヴァ」。低温で焼いたメレンゲに季節のフルーツや生クリームを乗せた、サクッとした軽やか食感のスイーツです。

【ギリシア】ギリシアはギリシア正教の国なので、大きなイベントの前に40日間の断食期間をもうけます。このためにクリスマス前にも肉や魚、乳製品が禁じられて断食をするのが風習です。現在では断食しない人もいるようですが、それでも質素な食事を心がけています。そして断食明けにはいよいよクリスマス! 山のようなご馳走がテーブルを飾ります。中でも代表的なのが「クラビエデス」「メロマカロナ」の2つのスイーツ。それぞれハチミツやバター、アーモンド、クルミなどが入った定番です。また、プレゼントは1月1日に開ける、というのも大きな特徴です。

【フィンランド】フィンランドでは、12月24日から26日までの3日間がクリスマスです。イブには心身を清める習わしからサウナに入ります。料理では豚肉のハムである「ユールシンカ」や野菜と肉を入れてオーブンで焼く「キャセロール」が食卓を彩ります。また、フィンランド北部の都市であるロヴァニエには、サンタたちが住む“サンタクロース村”があります。森に囲まれた幻想的な村の中ではサンタやトナカイと会うことができるそうです。オーロラが見られることもあって世界各地から観光客が訪れています。

【シンガポール】12月25日が祝日のシンガポールでは、多くの人がレストランで特別メニューのクリスマス・ランチを楽しむ風習があります。街もクリスマスムード一色で、各ショッピングセンターでは巨大なツリーが飾られ、オーチャード・ロードで見られるイルミネーションは盛大です。マリーナベイサンズでも豪華な飾り付けやツリーなどで盛り上がり、人々が楽しんでいます。

【フィリピン】東南アジアの中で唯一のキリスト教国フィリピンでは、数あるお祝いの中でもクリスマスがいちばん大切な日と位置づけられています。国民の約80%以上がキリスト教徒であることから、多くの人たちが12月16日からイブの日まで毎日開催される“シンバン・ガビ”といわれるミサに参加して祈りを捧げています。ショップなどでは数ヵ月前からクリスマスソングを流してカラフルなランタンやオーナメントで街を飾り、住民たちは家のドアを閉めずに誰にでも食事を振る舞うこともあるなど、まさに国中を挙げてのお祝いをしています。

【香港】商業施設でド派手な原色を使ったクリスマスのイルミネーションが見られる香港では、中国と欧米の2つの文化が混じり合った雰囲気が楽しめます。教会での厳かなミサと、煌びやかに飾られる街中の様子が対照的。普通の日でも美しい香港の夜景が、一層美しくなるのもクリスマスです。また、在住者に欧米人が多いことからクリスマス休暇があるのも特徴です。