ペットを飼っている人にとって、犬やネコなどは家族の一員。そんな大切なペットを置いたまま数日間の海外旅行に行くとなると、気がかりですよね。それならペットも一緒に連れて行っちゃおう、というのもアリ! そこで、海外旅行にペットを連れて行く方法についてのお話しを2回に分けてしていきましょう。今回は“手続きと条件”についてです。

ペットを海外に連れて行くために必要な手続き

ペットを海外に連れて行くことは可能です。ただし、そのためには色々な手続きと準備が必要となってきます。これらを全てクリアすることが前提条件です。ひと口にペットといっても様々な種類がいますが、ここでは一般的な犬やネコを前提として説明していきます。

最初に知っておきたい基本的条件

ペットの場合、海外に行く時には“出国入国”ではなく“輸出輸入”となります。そして日本を出るための条件と旅行先の国に入るための条件をクリアする必要があります。また、ペットにマイクロチップを装着、連れて行くための専用ケージも必要です。
なぜこれほど様々な条件があるのかというと、これは疫病を予防する措置のためです。例えば犬の場合、狂犬病がその理由です。狂犬病は人間にも感染して死に至ることもありますが、現在の日本は発生しない地域となっています。ですが世界には発生する国と発生しない国があり、そのために犬の移動に制限する措置が取られているのです。また、発生する国と発生しない国では詳細が異なってくるので、事前にチェックしておくことが重要です。ペットへの手続きは、狂犬病だけではなく、あらゆる疫病を外に出さない、入れないために必須な条件なのです。

基本的な手続きの流れ

ペットへの手続きや条件の基本として、必ず必要なのが「マイクロチップの装着と識別」「狂犬病予防注射の接種」「狂犬病抗体価検査」などがあります。これらの手続きの基本的な流れは以下の通りです。

海外旅行先への出国(輸出)手続き

1、マイクロチップの装着

ペットの個別識別ができるように、マイクロチップを装着します。この時のマイクロチップは、ISO規格11784または11785に準拠している“FDX-B”という規格のものを使うので、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。すでにその他のマイクロチップを装着している場合には、旅行先の到着予定港の動物免疫所に確認することが必要となります。また、動物検疫所の読取機に認識しないマイクロチップだと、自分で読取機を用意することになるので注意しましょう。

2、狂犬病の予防注射&再予防注射

マイクロチップの装着後、生後91日目以降に狂犬病の予防注射を2回以上接種します。また、2回目以降の予防注射は前回の接種日から30日以上間を空けて、1年以内に接種することになっています。ペットを海外に連れて行くには、予防注射を2回以上受けていることが条件のひとつです。普段から接種を受けていると思うので、その日にちなどを確認しておきましょう。

3、狂犬病の抗体検査

狂犬病予防注射の接種を2回した後、有効免疫期間内に採血をして国が指定する検査施設で抗体検査を受けます。抗体検査とは、ワクチンの接種で得られる免疫力の一部を調べる検査で、血液中にある感染症に対する抗体の数値をチェックしてそのペットの現在の免疫力を知るために行ないます。抗体検査の結果通知書は輸出の検査時に動物検疫所提出します。抗体検査に関しても、かかりつけの動物病院に相談するといいでしょう。

4、動物免疫所で輸出検査

動物免疫は、世界各国が動物の病気の侵入を防ぐために行なっている免疫制度のことで、犬やネコ、うさぎ、鳥などのペットとして飼育されている動物には必須の検査です。輸出検査を受けるには出国の7日前までに動物免疫所に連絡をして、輸出検査申請書を提出するかNACCS(動物検疫関連業務)に申請します。輸出検査時には、「狂犬病予防注射、再予防注射の証明書」「抗体検査の証明書」を提出するので忘れないようにしましょう。また、旅行先の国によっては早めの連絡が必要になるので要チェックです。

5、輸出検疫証明書の取得

輸出検査終了後に英文の輸出検疫証明書が発行されます。海外旅行出発日まで無くさないように、忘れないようにしましょう。

6、海外旅行先の国に入るための条件の確認

先にもお話しした狂犬病が発生する国としない国があることなどを含めて、世界各国には入国するための条件があり、その内容は国によって異なってきます。日本での免疫検査だけではペットを海外に連れては行けません。旅行先の国の大使館や免疫当局に確認をして、必要な手続きを取るようにしましょう。国によっては時間がかかる手続きもあるかもしれないので、早めの確認を心がけるといいでしょう。これは日本での検査手続きでも同様です。覚えておいて下さいね。

日本への入国(輸入)手続き

海外に行く時と同様に、日本に帰国するときにもペットに対する手続きや検査があります。ペットと共に無事に日本に帰れるように、しっかりと手続きをしておきましょう。

1、動物免疫所への輸入の届出

日本への到着40日前までに、到着予定の空海港を管轄する動物検疫所に輸入の届出をします。届出は“輸入の届出書”を電子メール添付やFAXで提出する他、インターネットでNACCS(動物検疫関連業務)を利用することもできます。内容に問題がなければ「届出受理書」が交付されます。「届出受理書」は、旅行先の国(輸出国)での手続きや飛行機の搭乗手続きの際に提示を求められることもあるので、電子ファイルや印刷したものを大切に保管しておきましょう。

2、旅行先国で出発前検査を受けて健康証明書を取得

旅行先国で、狂犬病などの疑いがないか、かかっていないかの検査を受けます。問題がなければ旅行先国の政府機関が発行する「健康証明書」が貰えます。また、日本到着までに狂犬病予防注射の有効免疫期間が切れてしまうようだと輸出待機になってしまうので、有効免疫期間内に追加の狂犬病予防注射を受けておくといいでしょう。ただし抗体検査の有効期間は2年間です。海外旅行の場合にはさほど重要視することはないかもしれませんが、念のために確認しておくと安心できるでしょう。

3、日本到着後に動物検疫所で検査

日本に到着したら、動物検疫所に輸入検査申請書を提出して輸入検査を受けます。検査はNACCS(動物検疫関連業務)でも可能です。旅行先国(輸出国)政府発行の「健康証明書」と動物検疫所の輸出検疫証明の条件を確認できて、輸入検査に問題がなければ終了。安心して自宅に帰ることができます。

以上の手続きや条件は、海外旅行先での滞在期間が短くても長くても必ず必要となります。手間がかかる手続きだとは思いますが、かわいいペットと共に海外で過ごすためにクリアしましょう。自分とペットにとって、いい思い出になる海外旅行にしましょう!

動物検疫所
https://www.maff.go.jp/aqs/index.html