日本大学経済学部の二年生頃、「ナニワ金融道」作者の青木雄二さんの本を読みふけり、「ミナミの帝王」のビデオをレンタルする日々とパチンコ屋さんのバイトに明け暮れる生活を送っていました。

全く縁がなかった金融というテーマに身近な事柄から興味を持ち、自分で稼ぐ時給1,000円というリアリティとのコントラストにもともと知的好奇心があったのでしょうか、貪欲に知りたいと経済界隈の文献や参考書なども購入して勉強しました。

時は2000年、当時はITバブルが絶頂を迎えていた時でした。ニュースでは日経平均株価が2万円に到達した、とかYahooの株価が1億円に到達したなどと経済関連のニュースが流れており、株式の意味も知らなかった経済学部の学生でも、何かとてつもなく儲かっていることが世の中で起こっているんだなという感覚はありましたがやはり経済学部である以上株式も勉強しなければと、バイト終わりに株の本を購入してお菓子を食べながらリラックスして読むというのも日課になりました。株式という存在にもまた学生時代の私は大いなる衝撃を受けました。経済動向や企業の業績の将来性を分析して投資をすることによる先見の明が発揮された時には大きな利益を得ることが出来るという事実がいわゆる不労所得になること、あくせく働かずにお金を得ることが出来るとは考えもしなかった青年だったので、投資という概念を知り、こんな素晴らしい仕組みは経済学部の学生の身としては大義名分と実益を兼ねて俄然勉強しなくてはと大学の授業に参加する意欲が飛躍的に上がりました。

勉強とは、それに興味を持ち勉強するのが楽しいと思えれば最強のような気がします。このころから民放のTV番組ではなくNHKのニュースをよく視るようになり日経ビジネスを定期購読するようになったり関心がだんだんと大人びていきました。
大学1年生の頃は単位を取ることが目的になっていて授業の内容などは全く無関心でいかに楽に単位取得するかを考えていましたが、2年生頃からは積極的に授業に参加し教壇の近くで受講する真面目な学生になっていたように思います。履修していない授業でも受講制限がわるわけでもなく同じ授業料を支払って受けれるのだからお得だし教授によく質問もしていました。

その中で私がいまだに印象のある経済学概論の再履修の授業で女性の教授が分かりやすく経済の仕組みを教えていたのですが、その中でジョージソロスという投資家が外国為替市場でイギリスの中央銀行であるイングランド銀行と対決して、その勝負に勝ち短期間にして2,000億円の利益を上げたという逸話のビデオを授業で視せてくれました。若干20歳の私はその映像を、我を忘れて見入りました。「マジか、2,000億円!」開いた口が塞がらない衝撃でした。自分は時給1,000円のアルバイトで朝から晩までタバコ臭い中、重いパチンコ玉を運んで働いてもせいぜい1日数千円しか稼げないのに、外国為替の仕組みもポンド通貨危機の意味も分かりませんでしたが、広い世界のどこかには明晰な頭脳を駆使し、金融市場で巨額の利益をたたき出している投資家が存在するのかと、自分はなんてちっぽけな人間なんだと改めて痛感した感慨深く貴重な、大げさではなく人生を変えるような神回の授業でした。

株式市場や外国為替市場とはなんという世界だ!巨万の富をしかも不労所得で得るチャンスがあるのはこれしかない、将来は絶対に金融に関わる仕事をしよう、どんなに小さな会社でも金融業界に飛び込んで生きていこう、そう思え進路が定まっていったのは大学に通った意義としてはあったのかと思います。