●起業する人への本気アドバイス
私が起業で味わった紆余曲折の経験談が読んでいる人のためになればと思い記載しましたが、書き終えてみると至極当たり前のことを列記していると気づきました。改めて基本を忠実に心に留めていただければ幸いです。

●HP作ってECで売る
弊社の総受注件数の半分は通信販売ECです。いうまでもなくインターネットでは世界や日本全国を相手にできます。1件当たり数百万円の入金はザラで、数千万円以上の案件もあります。お会いしたこともない上質な顧客にも訴求でき24時間営業できます。弊社事業は為替相場を扱うので時として受注が殺到して怖くなる思いをしたほどです。業務はITで極限まで効率化することができますので、仕組化してしまえば遊んでいても事業が回るというのは本当です。それとリアル店舗を構えて商売をやっていたら顧客一人一人と世間話でもして自分というパーソナリティを知ってもらう時間と労力が必要ですがHPであれば自社対大勢に向けていくらでも無制限にコンテンツを発信できファン作りが容易です。弊社では外国為替相場のリアルタイムレートを掲載していますのでユーザが気になるコンテンツを何度も見るためにアクセスしてもらうという狙いもあります。 

会社員時代はライオンズクラブや高額納税者のいわゆる富裕層名簿に電話セールスしたり銀座4丁目の会社に1件づつ飛込み、見込み客を発掘してクロージングするというone by oneの営業戦略で仕事をしていましたが、結果は出ずにモチベーションが続きませんでした。スーパー営業マン以外はそもそも億を稼ぐのは難しいでしょう。HPで受注すれば通販であれ来客予約であれ予め受注状況が分かりますので落ち着いて商品を用意することができますし、クロージングすることもなく、常にアクセス数と成約率を高め続けることに注力すればよいです。コンテンツ販売であればヒューマンリソースすら不要と思いますので仕組化の究極かと思います。

儲かる商売の4原則(堀江貴文氏提唱)
1. 利益率が高い
2. 在庫を持たない
3. 毎月の定期収入がある
4. 少ない資本で始められる

外貨両替事業は上記の原則に1つも当てはまりません、しかし世の中の無数にあるビジネスに対峙した時に私はこの原則に当てはまっているだろうかと考える癖はついています。また、業界がブルーかレッドオーシャンかというのも極めて重要な選択だと思います。競争が激しいと消耗戦になりますので参入した時点で失敗ですし、私はいつも思いますが、外貨両替事業はキャッシュレス社会の静かに沈みゆく斜陽産業か、近い将来必ず戻る巨大なインバウンド市場の成長産業かの二つの側面がありますが結局ブルーオーシャンか、レッドオーシャンかを論じた時に圧倒的なブルーオーシャンに弊社のポジションはあると思っています。なのでまだまだ行けるところまで行ってみようと思います。
結論、やはりコンテンツ販売が良いのではないかと思います、いずれやってみたいと思っています。ブログはそのアウトプットの訓練でもあります。

●ストーリーを公開し感情移入をさせる
商品力やサービス力で売る時代は終わりました。あなたから買いたいと思わせなくてはならないユニークさを発信すべきです。私はドン・キホーテで外貨両替店舗を開業したいと考えて創業者の安田会長に直談判するために自分の半生を私小説のように書きましたがワード70ページ分にもなり、結局読んでもらうという行動には出ずに漫画家さんにその文章を基にして漫画として制作いただきHPに掲載し多くのお客様へ私のストーリを知ってもらうきっかけになりました。平凡な人生などありません、自分を表現せずに暗躍できるような世の中ではもはやなくなっています。人間や会社という存在はまずは知ってもらわなければ話が始まりません。突然対面した時に人間が感じるのは防衛意識からくる警戒心です、それを解くのは自己開示でしかないと思います。(圧倒的能力や商品力があれば別ですが)私は対面で人に信用してもらえるほどの話術も外見も持ち合わせていません、若く見られるのでむしろ怪しいと思われることが多い気がします。同じ学校、同じ職場で過ごしたり飲みに行ったりすればその人となりが分かり、信用するに値するかも判断できるでしょう。しかし社会人になってからどれだけの人とそのような機会を得て信頼関係になれるかを考えると、極めて限られます。

新卒で入った証券会社で飛込み営業、電話セールスで金融商品を売っていましたが、営業部に在籍していた1年間に自力で獲得できた新規契約件数は0でした。当時私は自分が案内していた金の先物取引には絶対的な自信を持って親の口座で手張り(※)していたくらいですが、本業の新規獲得営業ではついには1件も契約を決めることができませんでした。絶対に儲けることが出来るのになぜ営業をかけた先々の人々は私の言うことを信じてくれないのか、それどころか名刺交換も商談すらもさせてくれない。今思えば初対面の無名な会社のどこぞの馬の骨かわからない新入社員に金を預けようと思わないし、むしろ関わりたくないと容易に理解できますが社会に出た直後の私はそんなことも気づかず世の中がおかしいのか自分が無能すぎるのか、いや、きっと後者に違いないと苦悩していました。
しかし今ではHPを見たお客様が能動的に注文をしてくれて、商談すらせずに買い決めをして訪ねてきてくださいます。信用していただくことは、会社の経営理念にもなっているので情報発信でそれを行っていくというのは一つの手段ですが、まだまだ行っている会社が少ないので差別化できる分野だと思います。

私のストーリは以下のようなものです。
・学生時代に経済に興味を抱いたこと
・初めての海外旅行で国際感覚に目覚める衝撃を受けたこと
・新卒の証券会社で苦労した営業経験
・起業当時の暗黒時代から軌道に乗るまでの軌跡
・現在の会社の状況
「落ちこぼれ証券マンの起業奮闘記」のような感じでしょうか。証券マンとか外為ディーラーとか、実体が判りにくい経歴から起業した経緯を赤裸々に表現することで支持いただき、取引を検討していただくという実益も兼ねています。
自分が何者であるか、何を考えているかということを世の中に訴えていくことは経営者の重要かつ簡単で効果的な仕事です。ジェフベゾスやフォーレンバフェットも行っています。情報発信の文章力は読書量と環境だと思いますが私の場合は社内にブログをやると宣言をしているので止めたら面目丸つぶれの環境のため続けています。しかし、知り合いの方にブログ読んでいるよと言われると嬉しいので負荷だけではなくやりがいもあります。

※証券会社の従業員が自分の資金で相場を張ること。

●ハッタリでも大きく見せる
2005年に1,000万円の資本金が用意できず株式会社が作れなかったので300万円(それもサラ金で借りてすぐに返済)で作れる有限会社で開業しました。4年くらいやりましたが受注件数は鳴かず飛ばずで苦しい期間が続きました。その後株式会社に変更した途端に明らかに受注が増え軌道に乗りました。お金を扱ってネットで営業している有限会社では信用がないためよく考えれば当然の結果でありますが起業直後はそんなことも分からずに時間と機会を無駄にしました。
買える信用は金で買え、と言われます。弊社は昔から運よくメディアに取り上げられる機会が多く信用を醸成する効果が高かったのですが本当に運が良かっただけで再現性はありません。しかし1つだけ記事広告で広告料を払って掲載してもらったものがあります。売上に繋がらないがある程度コストがかかるものでも対外的PRのためには特に信用に左右される商売であれば積極的に投資するのも必要です。運が良かったと前述しましたがメディア掲載は私の経験では人脈でした。シェアオフィスで一緒になったライターさんと知り合いになり、世間話の中でこんなことをやっているので掲載してほしいと話したところ、デスクに掛け合っていただき晴れて日経MJの一面に載りました。新聞の販売当日は朝から興奮が止まりませんでした。その他には雑誌に影響力を持つ方と知り合いになり、掲載させてもらえないかとご提案いただいたりと、私は意図せずそのような経験をしましたが、決定権や力がある編集者と出会えると話が早いです。そのような方がいる会合やサークルに参加するなど能動的に動いていればいつかはチャンスがあると思います。プレスリリースの投げ込みが成功した例もありましたので努力が功を奏してもいます。メディア掲載実績はお金に換えられない財産です。現在ではPR会社がメディア掲載を仲介してくれるビジネスもありますが依頼すると高額な料金になる場合が多いです。しかし、いつの時代も記者の方は面白い情報や旬なネタを追っていますので情熱を持って伝え続けることが王道かと思います。

●ケチでは経営はできない 
サラリーマンの金銭感覚を捨てること、広告費はギャンブルという人がいますがあながち間違っていないと思います。創業前はHPを作ってインターネット広告をすれば集客できると思っていましたが、実際にいざ始めてみると信用が無かったためアクセスはあっても思うような成約数に繋がりませんでした。お金がない時期に高い広告費を支払っても効果がなければ早々に諦めてしまうのは当然です。外貨両替は基本的にtoCの小売りですので集客を広告宣伝に依存します。当てにしていたキーワード広告がコケてしまった後に思いつきで一斉メール広告やファックスDM、折り込みチラシ、雑誌広告など藁をも掴む思いで試しましたが思った効果は出ず、というか成果は0でした。サラリーマン時の貯金とその後のアルバイトで貯めた資金で行っていたので数万円の虎の子があっという間になくなるのはまさに身銭を切る苦しい期間でした。
反省点としてはHPの成約率を極限まで高める、具体的には高額でも腕の良いデザイナーに依頼する。権威付けであるメディア掲載実績を誇大でもハッタリでも信用のある会社ということをPRする。広告に関しては書籍で勉強したり代理店の担当者と多く面談し一番効率の良い媒体を選択し、テストマーケティングをする。あとは 「紙幣を燃やす」覚悟を決める。即効性のある広告もありますがじわじわ効果が出てくるというものが広告の基本ですので予算と期間を決めてブレずに行うこと。私の場合は途中で切り上げて別の広告に手を出してしまい失敗しました。今では主力の広告媒体に安くない広告費を毎月投入していますが、それでアクセス数や成約率、1件当たり獲得単価も分かるので営業をしなきゃとか集客に悩むということはあまりないのですがそれでも商売の肝は集客ですので広告投資の拡大再生産の探求は永遠に続くことでしょう。

●シェアオフィス入る
これはかなりお奨めです。私は外貨両替事業なので当然来客の場所が必要でしたのでなるべくコストがかからない、かつ都心の立地で営業する必要がありシェアオフィスを選択しました。まず格安で、登記出来たりと場所借り以外でもスモールビジネスの業務に関わるサポートやサービスが充実していたことですが、最も大きかったメリットは同じ入居会員に優秀な人が多かったということです。起業をする人はすべからく皆、凄い経歴の人が多いです。そういった方でも最初は当然小さく始めますからシェアオフィスを利用する人は多く、いつも出入りしていると顔なじみになり親しくなります。そこでビジネスについて議論したり時には協業する出会いも少なくありません。私が出会った方の経歴では ゴールドマンサックスのバイスプレジデント、楽天、Dell、野村総研、シティバンク、パナソニック、リクルート、双日、公認会計士や税理士、社労士等々、世間で言われるところの優秀な経歴な方と多く知り合い仲良くなりました。そしてそのような人々が行き着く先が起業であり皆シェアオフィスに集まってくるのです。今では自宅で起業することも容易いし気楽かもしれませんがそのような人脈の財産を創るうえでは非常に有用だと思うのでわずかなコストを支払ってでも利用する価値は非常に高いです。
懇意にしていた元Dellの起業家はアメリカの大学を卒業して日本のDellに入社する際、周りの新卒より自分は英語が話せる分だけ年収を上げてくれと交渉し見事成功したそうです、しかし彼は起業をするためにITのことを勉強する準備に過ぎなかったので早々に辞めて国際的なネットワーク通信企業として活躍しています。経歴だけではなくそのようなガッツのある猛者共がいる一方で、中には数万円の会費も払えずに行方不明になる者や、何をやっているかわからない怪しい人もいたので、ある意味魑魅魍魎が跋扈しているとは言いすぎですが刺激的な場です。もちろん業容が拡大していけば自社でオフィスを借りて卒業していくのですが、心地よくそこが好きでずっと居続ける人もいます。私は賞味7年間ほど日本橋のシェアオフィスにいましたが最後の頃は来客が増えすぎて共有の会議室を独占するといった状態になっていましたので卒業して店舗兼オフィスを借りている今となっては有難いことですが、人脈が増える機会はめっぽう減りましたので感慨深いものがあります。