継続企業の前提という会計用語があります。上場企業は株式を公開して広く投資家から資金を募る責任として財務内容の公表やそれが適法に運用されているかのチェックである監査を第三者の監査法人から受けなければなりません。

継続企業の前提ゴーイングコンサーンとは企業が将来に渡って継続的に事業を行うことを前提に財務諸表が作られる原則です。著しい業績悪化や、法令違反の疑いがある場合は監査を行う監査法人が当該企業に対して、継続企業の前提が脅かされているという内容を投資家や時には監督当局へ周知するために財務諸表へ注記(GC注記)する必要があります。
企業が上場するというのは経営者にとっては大きな目標でありステータスです、さらに保有株式の莫大な資産増加により通称エクジットと言われる創業者利益を一種の人生のゴールと見なしている人も多いと上場に携わった関係者に聞いたことがあります。確かに会社としての一区切りでありますが、多くの投資家をはじめ利害関係者が激増するにもかかわらずそこで燃え尽きてしまっては、モチベーションも業績も上がらずに失望させてしまう展開があるのも自然なことなのかなと思います。

私が思うのは上場をするほどの業績の実力とネームバリューと資金、そして多くの期待を背負ってビジネスを行えるポジションであるはずなのに、経営者の慢心はもってのほかですが、想定外の外的要因の悪化に襲われ大企業といえども絶体絶命の大ピンチを迎える現実が多々ある経営の厳しさのことです。
近所にいきなりステーキがあるのですが、2年前にそこでステーキを食べていると、派手なハイヤーから派手な出で立ちの如何にもお金持ちな風格の年配の男性が店に入ってきました、顔を見なくとも只者ではないオーラが満ちていましたが顔をよく見ると店内に至るところに貼ってあるポスターのコックさんと同じお顔をしていました。そう、いきなりステーキの社長だったのです。私の直感はよく当たるので間違いないと思いました。店内では従業員に大きな声で話かけていて元気よくステーキを食事されていて、いかにもオーナー企業の社長という振る舞いをしていました。当時は飛ぶ鳥を落とす勢いで外食産業の雄としてメディア等でも取り上げられていたので私は感激し、話しかけに行きました。すると気さくに名刺交換に応じていただき、写真撮影まで快諾…というよりあちらから写真を撮ろうと言ってくださり固く握手を交わし、会社の社報(社長が全社員に向けて定期的にメッセージを発している、研修会のようなものも開催している)みたいなものをいただきました。

大変うれしい思いで店を後にしましたが、その後のいきなりステーキの凋落は説明するまでもなく前述のGC注記が付くほどに業績と財務が悪化してしまい倒産情報が出るほどに陥っています。
生き馬の目を抜く飲食業界で半世紀にも渡ってサバイバル、業容を拡大しきて知名度もある無敵の経営者として映っていた方です。非常にタフで努力家で求心力もある経験豊かな創業社長で、私は足元にも及ばないと思いますがそういった方でも厳しい逆境に晒される局面に立たされる現実には世の中の諸行無常・栄枯盛衰を感じざるを得ません。
一般的な中小零細企業に至っても起業の生存率は創業から5年後は15.0%、10年後は6.3%。20年後はなんと0.3%です。非常に厳しい。

弊社インターバンクは創業から15年が経過しています。上記に当てはめると廃業する確率の95%以上を何とかサバイバルしています。企業の目的は利潤追求ですが、私はそれよりもむしろ生き残るための守りや慎重さも重要なことだと実感しており、長く継続していることは唯一誇らしいことだと思っています。とにかく生き残る。コロナ禍で同業者が次々と廃業、撤退という選択を余儀なくされています。平時ではライバルの消失は歓迎すべきことなのかもしれませんが、ここまで続くとおぞましい思いすらします。業界にとっては前代未聞の不況であることは間違いありません。私の経験からして飛行機が飛ばずに海外旅行へ行けない日が来るとは夢にも思っていませんでした。もしそうなったら商売はあがったりと考えたでしょう。しかし実際はそうではなく2020年に関してはしっかりとゴーイングコンサーンが出来そうな道筋は見えています。この不況を乗り切れば後の起業人生においても自信になると思います。人生においてアップダウンがあるのは必然ですが企業のそれはよりダイナミックです。為替相場という荒馬にしがみ付いているような仕事ですが、外貨両替事業に関しては一日の長があると自負しています。黄金のサラブレッドとして手懐けられるよう精進していきたいと思います。