弊社では四半期に1度賞与支給があります。

コロナ以前の業績は高位安定しており、毎月の業績達成はクリアしていましたので勤続年数に応じて無条件に賞与支給がされていました。しかし、そこには個人査定という概念はありませんでした。

コロナ禍で弊社の業界である外貨両替事業は海外旅行客や訪日客が激減した悪影響がまさに直撃して20年4月頃から急激に業績は悪化しました。しかし月別の推移を見て最悪期においても赤字に陥ることはありませんでしたが到底賞与達成レベルに到達できない期間が20年11月までの8か月間続きました。

その間に業務は減り人手が余りましたので社員は週5勤務から週3勤務へと減らし、週休4日という勤務体制を続けています。

国の助成金を活用して社員には休業日でも満額の給与支払いを補償し会社は1日二人体制+社長の私が作業要員となって何とか業務を運営している状況が現在も続いています。
苦しい時期が続きましたが20年12月には9か月ぶりにようやくなんとか業績が賞与達成レベルに到達しました。

私は予てから社員に対して休業補償として単にお金が貰えて休むことができてラッキーと思っているだけならあなた達の将来はないよと伝えていました。

そうは言ってもほとんどの人が何もせず無為に時間を過ごしているだろうというのは想像に難くなく、自分が同じ立場でもそうだろうなとは思いましたので会社から「資格制度」を創設して勉強の時間、そして給与アップの機会にしてもらうための有効な時間にしてほしいと勉強会や面談の場で伝えました。

その内容は受験料および参考書代は会社負担で、合格した資格によって資格手当を給与に永久加算するというものです。役員とともに一生懸命考えて会社の為というよりは社員個人に関してメリットでしかないこととして熟考し創設しました。

私は日ごろから他の会社や他の業界に転職しても評価され得る社会から求められる人財であってほしいと伝えており、普段の勉強会としての自己啓発とは逆に今回の資格制度に関しては実学としてのスキルをつけてもらう具体的施策の福利厚生の一環です。

資格取得奨励制度(インターバンクHD)2020

社員にとっては休業で時間はたっぷりあるし、資格に合格すれば給与はアップし受験料等のコストも一切かからないノーリスクハイリターンの提案でしたので受験することを期待し、すぐに挑戦することを表明する者もいたので期待しておりました。

しかしながら毎月の面談では決まって、休みは何している?という質問や直球で資格制度は申し込みした?という回答には全員が有耶無耶でお茶を濁し、これは何もしていないなと直感しました。本来資格は誰かに言われて取得するものではないし取得したからといって給与がすぐに上がるというものでもありません。

まさに自分の将来の為にスキルを高める証明であり、履歴書を充実させるという目的になりますので本人に自発的意思がなければアメをぶら下げても飛びつかないというのがわかりました。

そうは言っても給与が支払われ休業しているのに何もしないという自社の社員の状況は経営者としての私自身は受け入れられない思いが強くありました。
ましてや社員を休業させても私が毎日出社してあらゆる工夫をして業績を何とか回復させて賞与までを出せる状況になっているにも関わらず、です。

そこで私は全員に資格制度に挑戦しない者には、賞与査定に影響させるというアナウンスをしました。アメで動かないならムチをちらつかせるしかないと判断したのです。

このようにネガティブなアナウンスは不本意でありペナルティなく人を動かせるのが理想でしたが現実は甘くなくお互いに厳しい空気が流れることになりました。

最初は資格合格を条件にしようと思いましたがあまりにも腰が重いので受験のみを線引きにしました。

さすがに自分の収入に悪影響があると知れば危機感を持って行動をするであろうと踏んでのものでしたが、その後の面談でも申し込みはしたが受験はしていないという曖昧な結果が続き、私は何回も同じことを繰り返し言うのは辛いし、社員の一人からあまり追求しないでくださいと言われたこともあり、私の脳内ではこれだけ言っているのだから実際に受験という事実がなければ機械的に査定を下げるだけだと割り切ってその後は無言をきめていました。

時は立ち、それでも受験をしたという報告は残念ながら誰からもなされることはありませんでした。

このまま黙って賞与査定を下げるという選択肢もありましたが、おそらく申し込みしたとか、確定した予定がある等の理由があれば期限が過ぎても査定は下がらないだろうという甘い考えを持っていると思うので、私自身が重い腰を上げて最終の面談を各自に行いました。以下はその面談時のメモを基にした文です。

>>
資格取得について最終連絡です。
賞与支払い次の20日に迫っている、来週前半には給与計算しなければならない。
申し込みはした?受験を終えての条件、先の申し込み「予定」は了承してはいない。予定に報酬は出しません。
線引きは受験という事実 申し込みをすれば良いと思った? 
期限に受験しなかったという事実、業績は賞与ラインに達しているという事実 
事実は事実を持ってしてのみ覆せる
期限過ぎてるのに賞与を満額受ける権利あるか 期限のない仕事はない
なぜ遅くなったか 
資格制度は会社の方針よりも社員のため、今回は休業期間に何をやっていますか、何もしてないなら休業分日割りとか査定下げるとか合理的な提言です。
今回受けそうにない人もいてその人は下げます、それが会社からの意思表示です。
交渉だから。満額回答か否か、受験せずに期限過ぎたという事実をフォローする事実や根拠が欲しい
どうする?勉強会でも個別でも査定下げると言ったことは遂行しなければならない、私の発言の信用なくすから。
私がどう思っているのか、査定下げたいと思っていれば黙って下げます。自分のことだからよく考えて欲しい。私はあなたの行動待ちでしかない、どうする?
自分で考え行動する⇒動かないならケツに火をつけてでも動かさないと方針が形骸化する。
私ならどうするとは言いませんが、絶対に下げては欲しくないとは思う。
●●するので下げないでくださいという提案はあるか。
1つの結論は賞与下げてくださいだが、方やそれだったら下げないようにしようと私が思うような回答が欲しい
結論⇒持ち帰って一両日中にください。査定下げは不利益と思うのでフル回転で考えてそれを回避するために動いてみたら。
例えば誰かに相談するとか、同僚、上司、親族、友達、ありとあらゆる方法を自分で考えて回答してください。
>>

社員の反応は、期限があるとは知らなかったとか申し込みはしていたが延期になったとかの理由が多く、予想されたものが大半でしたが期限がもう間近に迫っていて自分の招いてしまったピンチであってもそれをどのように形勢逆転するか、または少しでもリスクを最小限にする行動がとれるかを実は私は見ていました。

社内面談であっても交渉です。相手が納得する提案をして自分のリスクを回避することができるか、互いがどう歩み寄れば一番ベストな結末を迎えることができるか、自分事として考える訓練でもあるので私からは助け舟は出しません。会社の利益を考えればこのまま受験をしなかったという事実だけで賞与0にしたとしても文句は言えませんから。

弁解は形式上聞きますがほぼ聞いてません、どのように生産的な場にするか、どこに落としどころを見つけるか。一両日中に各者各様が改めて提案するという機会を持たせて散会しました。

期限までの10日足らずで新規に資格を申し込みして受験を完了させることは時間的余裕がなく不可能と思っていましたので各自がどのような提案を持ってくるかというのを待ちました。提案内容に優劣は付けづらいため提案をすれば内容如何に関わらず評価をして査定の下げを緩め、両者が納得する査定値に落ち着かせようと思っていました。

内容ではなく行動の有無だけを結果として判断するという評価者としてはかなり譲歩した姿勢でいましたが、最後まで提案する者、そうでない者とに分かれてしまいました。

しかしながら大変嬉しい報告があり社員の一人が期限内に合格通知を送信してきて見事受験合格という結果を出してくれました。私が連絡を受けた時は前述のように短期間での受験ですら不可能と思っていたのでまさか合格のステータスまで獲得して文句無しの結果を出してくれたことはとても驚き感動しました。

最終面談では彼女も期限内の受験予定はなく他の者と同じ状況にあったという環境から、これではいけないと直ぐに受験できる資格を探し手続きを調べて受験、合格の運びまで持って行ったということは言い換えれば他の者も同様に時間的余裕があったはずでありました。

自ら行動する者、促され行動する者、何をしても行動しない者

今回上記がはっきりと表れた形になりましたので、

それぞれ 100%、80%、50% という査定をしました。結果を出した者と、結果を出せなかったことに対してフォローした者、何もしなかった者と区別はしましたが、中間の「結果を出せなかったことに対してフォローした者」に対しての評価はやはり難しく恣意的になりたくないのであくまで結果にフォーカスして評価する仕組みとして詳細な人事評価制度を作成することをコーチングコンサルタントと画策しています。

今後も真っ先に手を挙げる者、最後まで手を上げない者が仕事の姿勢として表れてくると思います。評価者としてはいずれにしても会社のアナウンスには有用で、区別するのに説得力や公平性を保てるため、公平中立かつ厳正に評価していくことをむしろ入社した後が仕事の本番であることを一層自覚してもらい勝負の世界の住人になってもらいたいです。