由緒あるイギリスポンドの由来

イギリスは通貨としてイギリスポンドを採用しています。ポンドという名前の由来は非常に古く、8世紀にマーシアにて1ペニー硬貨がつくられたことが始まりです。1ペニーには当時における1ポンドの240分の1の銀が含有されていました。また、ポンドという名詞の語源はラテン語で天秤を意味するリーブラから来ており、現在もポンドを意味する記号はラテン語にてリーブラを表記した際のイニシャルを元につくられたものを使用しています。
ポンドはその長い歴史のなかで何度も他の貨幣との交換レートが変更されており、なかでも特に長く使用されていたのは1ポンドが240ペンスに値するレートです。しかし、このレートは価格の計算を煩雑にすると考えられ、1971年に1ポンドが100ペンスとなるシンプルなレートが制定されました。現在使われているのもこのレートです。イギリスは伝統を重んじる風潮が強いことから長く続いた決まりごとが変革されにくい国ですが、国際化が進み外貨との取引を想定しなければならない時代に、使いにくいレートを維持する意味は薄いと考えられたのです。
現在の比較的シンプルな貨幣制度に至るまでに、イギリス貨幣はさまざまな変化を遂げてきました。クラウン貨幣は1つで5シリング、フローリン貨幣は1つで2シリングといったように、多くの補助貨幣がつくられては廃止されていったのです。そのなかでも特に目を引くのは1817年につくられたソブリン金貨で、自由に溶かし、自由につくることができる画期的な金貨でした。これも現在は廃止されています。

大英帝国の膨大な植民地が普及に一役買った

米ドルが世界的な通貨となる以前は、イギリスポンドが全世界の基準となっていました。この影響力の高さの背景には、イギリスがかつて多くの植民地を抱える世界的な一大帝国だったことが挙げられます。造船技術や航行技術の発展によって訪れた大航海時代に、イギリスは他国より進んだ科学技術をいかして世界各地に進出し、多くの大陸や島に植民地を増やしていきました。こうして増えていった植民地にはイギリスの文化と技術が流入し、同時にポンドも植民地にて流通しつつ外貨と取引されていったのです。大英帝国時代に幅広い地域に普及させていた歴史があったからこそ、イギリスポンドは世界で一番普及していた貨幣だったのです。
しかし、第一次世界大戦を経てアメリカが国際社会におけるトップクラスの影響力を手にしたことから、米ドルがイギリスポンドを抜いて世界で一番信用度の高い通貨となりました。この米ドルの影響力は現在も続いています。
しかしポンドの影響は根強く、現在でもマン島やチャンネル諸島などではポンドが発行されています。ただし、これらのポンドはイギリスポンドとしては使用できません。イギリスで流通しているポンドとこういった他国のポンドとを区別する場合は、イギリスポンド、またはスターリングポンドと呼称します。スターリングポンドと呼べる通貨はイングランドとウェールズの銀行だけでなく、スコットランド銀行やアイルランド銀行などでも発行されています。
現在、イギリス王立造幣局では1ペニーと5種類のペンス、そして1ポンドと2ポンドの合計8種類が発行されています。どの硬貨もデザインが非常に凝っており、なかでも不定期にデザインが変更される1ポンドはコレクターからも支持を集めています。

2000年代からは金融危機とEU問題で揺れ動く

イギリスポンドは国際社会で流通する通貨のなかでも特に変動幅が大きいものとされており、為替取引などを行う人々からその動向が注目されている通貨です。サブプライムローンショックが起きた際にはかなりの影響を受け、その価値は急激に下落しました。そこから徐々に価値を取り戻しつつあったところに世界金融危機が発生し、さらに暴落してしまいます。一時期は2007年における日本円との為替相場の半分まで落ちており、立て続けに起きた金融界の大事件がポンドに与えた影響の大きさを物語っていると言えます。この時期のイギリスは外貨の獲得にひどく苦労することとなりました。
また、2016年にイギリスで行われたEUからの離脱に関する国民投票にて、離脱派が過半数を占めたこともイギリスポンドの価値を激しく揺さぶりました。以前の暴落もあってか、この投票結果をきっかけにポンドの扱いをやめた両替商も少なくありません。2000年代から2010年代はポンドにとっては試練の歴史だったと言えます。
こういった変動の激しさから、イギリスポンドはFXなどの為替取引を行う人々からは扱いが非常に難しいかわりに大きな利益を狙える通貨として有名です。ポンドを利用した取引は1日で億万長者になる可能性もあれば、同時に1日で全財産を失う可能性もあります。そのため、よほどの上級者でないと手を出してはいけない通貨として扱われています。
イギリスはEUだけでなく周辺諸国にも強い影響を与えている国家です。そのため、国際社会の動きを見るうえでも、イギリスポンドの動静には注目しておく必要があるでしょう。