日本にはない海外の文化としてチップがあります。海外旅行に行って、チップのことは知っていてもどれくらいの金額をどんなタイミングで渡したらいいのかが解らないこともあるでしょう。チップに関しては以前このコラムでもテーマにしましたが、今回は2025年最新版として世界のチップ事情についてお話ししていこうと思います。

チップの基礎知識

まずはチップの基礎知識です。その歴史と流れ、現在のチップ事情などをお話ししていきましょう。

チップとは?

チップとはホテルや飲食店、タクシーなどで何らかのサービスを受けたときに、“ありがとう”の意味を込めてメイドやポーター、ウェイターなどのスタッフやドライバーなどに渡す礼金のことです。日本でも旅館などではお心付けとしてお金を包んで渡す風習がありますが、これは必ず渡す必要があるというのではなく、文字通り渡す側の気持ち次第。ですが海外のチップは、基本的には“渡す必要があるもの”となっています。

【チップの歴史】チップの由来は諸説ありますが、中世から18世紀ころにヨーロッパの国で始まったとされていて、意味合いとしては「これをよろしく」「いい仕事ありがとう」「早めによろしく」という気持ちで迅速性を保証する“To Insure Promptness”の頭文字からtip(チップ)といわれています。
チップは最初、ヨーロッパ全土に拡がりさらにヨーロッパ諸国の植民地まで拡大、19世紀のアメリカでは労働者を安い賃金で使うために雇用者は給料をほとんど払わずにお客からのチップを彼らの収入にさせていたそうです。

【現在のチップ事情/アメリカ】現在でもチップの文化が根強く残っているのがアメリカです。昨今でもチップありきの賃金設定の場合が多く、チップを想定した職種ではチップなしの職種の3分の1程度の最低賃金になっている州も多いといいます。これが要因で利用客側は感謝の気持ちの任意ではなく、半強制的にチップの支払を求められます。
近年、このことからアメリカではチップをめぐる悩みが増していて、コロナ渦以降、それまでチップがなかったファーストフードやカフェでデジタル決済機の導入と共にチップを求めるようになっています。さらに物価の上昇に便乗する形でチップの金額も値上がりしていて問題となっています。

【現在のチップ事情/ヨーロッパ】アメリカに対してヨーロッパでは、現在“脱チップ社会という流れがあって、レストランなどではサービスチャージという形で通常の会計にチップ相当分を組み込むことでチップを払わなくても問題なしという流れになってきています。もともとアメリカほど強制的にチップを払う文化がなかったこともあり、脱チップは拡がっています。
ただし、国によっては昔からの風習が残っている場合もあり、マナーとしてチップが必要となるシーンもまだまだあります。

海外旅行時のチップ基礎知識

海外旅行では、国によってチップが必要だったりいらなかったりと様々です。旅立つ前に行く国のチップ事情をしっかりと確認して、その意味をきちんと頭に入れておきましょう。

チップが必要な国と不必要な国

チップは国によって払う必要のある国と不必要な国があります。まずはこのことを知っておかないと余計にお金を使ってしまうことになり、場合によっては恥をかいてしまうことも…出発前に要チェックです。ここでは日本人の海外旅行先として、馴染みのある国の一部を掲載していきます。

※チップが必要な国
【アメリカ/カナダ/メキシコ/エジプトなど】前述したように、特に現在でもチップ文化が根強くあるアメリカでは必須です。ホテルや飲食店、タクシーなどの色々な場所でチップが必要です。

※一部でチップが必要な国
【イギリス/イタリア/オランダ/スペイン/デンマーク/スウェーデン/ノルウェー/ギリシャ/インド/フィンランド/マレーシア/ドバイなど】この国々では必ずチップが必要ではないですが、サービスや感謝の気持ちとして渡す習慣があります。サービスなどがよくて嬉しかった場合などは、たとえば端数を切り上げてお釣りをチップとして支払う感じです。このパターンは日本でも見られると思うので馴染み深いかもしれませんね。

※チップが不必要な国
【フランス/アルゼンチン/オマーン/イエメン/韓国/中国/台湾など】これらの国では基本的にチップは必要ありません。チップを置いたり渡そうとすると相手が戸惑ってしまうので、逆に迷惑になる可能性もあります。注意しましょう。

チップの渡し方と金額

日本人には不慣れなチップ。渡すタイミングや金額をどうすればいいかなど、考えてしまいますよね。ここでは渡し方と相場金額の基本を紹介していきましょう。

【チップの渡し方】チップは料金の会計時に一緒に支払います。現金の場合は料金に上乗せして渡し、クレジットカードではレシートのチップ記入欄に金額を記入します。
また、アメリカなどの飲食店などではデジタル決済機にチップの項目があります。クレジットカードやデビッドカードの種類を選択後、「15%、20%、25%、金額を選ぶ、チップなし」の項目から選んでチップを決めます。このパターンの場合、海外旅行時では無理に払う必要はありません。“チップなし”の項目がある以上はこれを選んでも問題なし。次いつ来るか解らない場所なので気にする必要もないといえるでしょう。ただし、よく行く常連の店やとても良くしてもらったと感じた場合にはこの限りではありません。

【主な場面別チップを渡すタイミング】
※レストラン
現金では会計後にテーブルに置く/クレジットカードではレシートのチップ欄に金額を記入/デジタル決済機では自己判断

※ホテル
ポーターには荷物を運んでもらった後/ハウスキーパーには外出する際に気づきやすい場所に置く(枕元やベッドサイド)/

※タクシー
目的地に着いて料金を支払うとき

※スパ
施術後

【エリア別チップの基本的金額】
チップとして渡すお金は、欧米などでは紙幣が基本。ヨーロッパではコインの場合もあります。チップ必須の国やチップが必要になることがある国に行く際には、チップとして渡すお金を用意しておくと慌てずに済みます。特に欧米を旅行するなら1ドル札を、ヨーロッパでは50ユーロセントコインを多めに用意しておくのがおすすめです。

※アメリカ
ホテルなどではポーターやハウスキーパー、場合によってはドアマンなどに1ドルから2ドルくらいが相場。レストランやタクシーなどでは料金の約10%から15%ほど。ただしハワイなどリゾート地の高級レストランでディナーの場合では多くて20%ほどが相場です。

※ヨーロッパ
欧州諸国では、ユーロ圏内でも国によってチップ習慣に違いがあります。ユーロ紙幣の最小単位は5ユーロでチップとしては高額なので50ユーロセントコインを渡すのが基本です。
ドイツではタクシーが料金の10%、レストランでは5%から10%、高級ホテルのポーターは荷物1個につき1ユーロが基準です。また、スイスなどではホテルやレストランはチップ不要で、ルームサービスなどには2スイスフランが基本です。

※アジア諸国
韓国や中国、台湾などでは基本的にチップ不要ですが、特別なときにはチップを渡します。その際には韓国で5000ウォン、中国では5から10中国元、台湾は50台湾ドル程度が相場となっています。

円安でただでさえお金がかかる上にチップも必要なので、旅行先でのお金の使い方には工夫が必要です。払わなくても大丈夫な場面ではチップなしにする、というのもひとつの方法だと思います。ですが、どんな施設においてもとても親切にされて嬉しかったというのであれば、その感謝をチップにして伝えることも大切です。海外では言葉だけでは感謝にならないこともあります。チップは臨機応変に対応することもポイントです。