何げない日常の風景の中で必ずといっていいほど目にする“橋”。簡単に考えれば、橋は人や車が目的に向かうときに利用する構造物のひとつに過ぎません。ですがどんなに小さくみすぼらしい橋でも、そのひとつひとつには様々な想いと歴史、伝説が隠されています。
今回は海外にある色々な橋を紹介しながら、橋についてのお話をしていきましょう。

橋の歴史と逸話

橋はいつ頃からあり、どんな歴史や逸話があるのでしょうか? 諸説様々ではありますが、まずは橋についての豆知識からです。

橋の歴史

【神話や伝説の中の橋】橋の歴史はとても古く、神話や伝説の中にも登場しています。日本の神話で最初に語られているのは「天の浮き橋」です。古事記によると、日本列島を作るときに天の神々が天と地を行き来したのがこの橋だと伝えられています。世界でも、空に架かる橋は神が天に昇るためのものであるという神話が多く残っていて、そのほとんどが空にかかる虹を天と地を繋ぐ橋としています。

【人類が最初に造った橋】人間が架けた最初の橋は、道と道を繋いで歩けるように造られたと思われ、川に飛び石を置いたり倒木を利用した丸太橋などが考えられています。さらに世界の橋の歴史を見ると最も輝かしい歴史を持つのはローマであり、古代ローマの中心を流れていたテヴェレ川に現在でも4つの橋が残っています。これらの橋は石造りのアーチ橋で約2000年前に造られたといわれ、現在でも使われていることを考えると当時のローマ人たちがいかに優れた技術力を持っていたかが解ります。

【進化する橋造りの素材と技術】ローマの石造りアーチ橋の技術はやがてヨーロッパ全土に伝わって石橋文化として発展、橋は都市の中心に造られて街々のシンボルとなっていきます。そして世界初の近代的な鉄の橋は、1779年に産業革命後のイギリスが造った「アイアンブリッジ」です。そして橋の素材は鉄だけではなくコンクリートが使われるようになり、さらに鉄筋コンクリートが登場、1883年にはアメリカでニューヨークのマンハッタンとブルックリンを結ぶ「ブルックリン橋」が完成します。ケーブルを使った吊り橋ブームに乗ったアメリカでは1930年代に長大吊り橋が各地で次々と造られるようになりました。

【橋が紡ぐ文化と暮らし】橋造りの技術は日進月歩で進んでいます。その歴史の中で人々の暮らしや文化を紡ぎ続け、人々の想いも内包されています。単に川や谷を渡るだけの存在ではなく、人類の進歩に大きな役割を果たして進化し続けています。

世界に架かる超有名な橋、珍しい橋

橋の果たす役割

橋は車や徒歩などで渡るという実用性だけではなく、その地域のシンボルになっていたり観光スポットだったりと様々な役割を果たしています。人々の文化や暮らしに密接に関わりながら、人類の進化と共に国や地域によって様々に変貌していく構造物といえるでしょう。

世界に架かる注目の橋

世界の各地には、誰もが知る有名な橋から日本では考えられないような珍しい橋がたくさん存在します。そんな橋を目的とした海外旅行も楽しそう! 多々ある橋の中からおすすめの橋を紹介していきましょう。

世界的に有名な橋

【1、マンハッタン橋/アメリカ】ニューヨークのイースト川をまたぎ、マンハッタンとブルックリンを結ぶ鋼製の巨大吊り橋が世界でも超有名なマンハッタン橋。全長約2089m、柔らかな曲線を取り入れたアールヌーヴォー調のデザインが美しく、上層下層で計4車線の車道路に加えて4車線の鉄道路、歩道と自転車道も設けられています。夜にはライトに包まれた橋が浮かび上がり、摩天楼の中で絶景を作り出しています。

【2、タワーブリッジ/イギリス】ロンドン市内を流れるテムズ川に、1894に架けられた跳ね橋のタワーブリッジ。全長約244mで橋には高さ50mのゴシック様式の2塔が立てられています。橋の開閉は電圧式ですが、初期には石炭による蒸気エンジンによって水圧がかかる方式で、この方式はタワーブリッジが世界初でした。歴史展示室も常設、公開されています。

【3、ミヨー橋/フランス】フランス南部アヴェロンの主要都市ミヨー近郊のタルン川峡谷
にかかるミヨー橋。片側2車線の高速道路が通る斜張橋で、イギリス人建築家とフランス人技術者が協力して設計されました。主塔の高さがエッフェル塔などよりも高い約343mもあり、世界でいちばん高い橋といわれています。地上から道路までの高さが最高270mで、峡谷に霧が立ちこめると雲の上に浮かぶ橋のような幻想的な風景となります。

【4、オクタヴィオ・フリアス・ジ・オリヴィエラ橋/ブラジル】サンパウロ南部のピニェイロス川に架かる斜張橋。2本の道路が立体交差しているというX字型の構造で、カーブする2本の道路を1本のケーブルで支える、世界でひとつだけのデザインで構成されています。全長約1600m、主塔の高さ約138mに使われているケーブルは144本にも及びます。LEDによる様々な色彩のイルミネーションに照らされる様は幻想的です。

【5、ヘリックス・ブリッジ/シンガポール】シンガポール最大の繁華街マリーナ・センターからマリーナ・ベイのリゾートホテル、マリーナベイ・サンズを結ぶヘリックス・ブリッジは、2010年に開通した歩行者専用橋。全長約280mの螺旋状の外観は遺伝子をつかさどるDNAがモチーフ。LEDライトのイルミネーションが二重螺旋構造のブリッジ照らし出して絶景を演出しています。

珍しい橋

【1、コウ・バン(金色の橋)/ベトナム】金色に光り輝く橋を空に向かって持ち上げるのは巨大な石の手! ベトナム中部の都市ダナン近郊にあるリゾート地に造られた歩行者専用橋コウ・バンは全長約150m、標高約1400m。空中にある橋を支えるのは風化した(ように加工された)石の手。橋を支える手と自分の写真は、SNS用に欲しい1枚かも!

【2、リビング・ルート・ブリッジ/インド】インドのノングリアットは世界で最も湿度の高い場所のひとつであり、この地に住むカシ族の人々は何百年も前からインドゴキムの生きた根を編んで橋を造ってきました。長い年月を経て強靱になったこの橋は50人分の体重を支えることができて数百年は保つと考えられています。勇気のある人は渡りに行くのもアリですね。

【3、クエスワチャカ/ペルー】インカ帝国時代から残る、数少ないロープ橋のひとつであるクエスワチャカ。全長約400mで500年以上もの間、アブリマック渓谷の両岸を結んでいます。毎年6月には地元の橋造り職人たちが古い橋を外して、“イシュ”という草で新しい橋を編んでいます。ひとりずつしか通れないほど細くて揺れる橋ですが、何ものにも替えられない体験ができることでしょう。

【4、ため息橋/イタリア】とても小さな橋ではありますが、数世紀にわたって詩人や画家、オペラ歌手を魅了し続けているのがイタリアのため息橋。夕暮れ時にサン・マルコ広場の鐘の音を聞きながら橋の下でキスをすると、永遠の愛が約束されるといわれています。新婚旅行にはピッタリの橋ですね。

【5、ディンブー/中国】切り出した石を川に沈めた伝統的なディンブーと呼ばれる飛び石。飛び石ではあるものの、これもれっきとした橋といっていいでしょう。中国の古都、鳳凰のダコウに石が並べられて、さらに上流に行くと明時代に造られた虹橋があります。石造りのアーチ橋に3階建ての構造物があり、夜にはランタンが灯ります。

世界にはまだまだ色々な橋が存在します。自分が興味を持って「渡りたい!」と思ったら、海外旅行計画を練ってみるのも楽しいでしょう!