NOと言えないガラスの壁。プラハで学んだ「高すぎる勉強代」
旅行情報
あなたの旅行先の国名・都市名
チェコ共和国、プラハ
あなたが旅行に行った年月
2019年10月
あなたが旅行に行った回数
15回目(旅慣れているという慢心が最大の敵でした)
あなたの年齢、性別、職業
30代、男、会社員
一緒に旅行に行った人の人数
単独(一人旅)
トラブル体験をした場所
旧市街広場から少し路地に入ったところにある、派手な看板の民間両替所
トラブル内容
あれは、中欧の宝石と謳われるプラハの美しさに、私の理性が少しばかり麻痺していた午後でした。
ヴルタヴァ川を渡る風は心地よく、カレル橋の彫像たちは荘厳でしたが、私の懐事情はそれほど優雅ではありませんでした。
屋台から漂うソーセージとビールの誘惑に抗うには、手持ちのチェコ・コルナが心許なかったのです。
観光客でごった返すカレル通りの一角で、その両替所は派手な瞬きを放っていました。
「0% COMMISSION(手数料無料)」、そして「BEST RATES」。
青と赤のネオンサインは、渇きを覚えた旅人にとって、砂漠のオアシスのように魅力的に映りました。
私は慎重にレート表を確認しました。
「1EUR = 25.50 CZK」。
当時の相場とほぼ変わらない好条件です。
空港やホテルよりも遥かに得だと判断し、私は財布から100ユーロ紙幣を取り出しました。
これが典型的な外貨両替の罠だとも知らずに。
ブースの中には、無愛想な大柄の男。 私が紙幣をトレイに乗せると、彼は無言でそれを掴み、素早くキーボードを叩きました。
カタカタという音が響き、レシートと共に戻ってきたのは、予想より遥かに薄い札束でした。
「……おかしい」
数えてみると1500コルナほどしかありません。
計算上は2550コルナあるはず。
日本円にして4000円以上の損失です。
レートにして1ユーロ=15コルナという暴利でした。
「計算が違う。 表には25.50と書いてあった!」
私はガラスを叩いて抗議しました。
すると男は、呆れたようにカウンターの隅を指差しました。
そこには、名刺サイズほどの小さなステッカーが貼られていたのです。
目を凝らさなければ読めないような極小の文字で、こう書かれていました。
『表示レートは1000ユーロ以上のVIP取引にのみ適用。
それ未満はスタンダードレート(1EUR=15.00CZK)となります』 血の気が引きました。
二重レート表示。
看板の大きな数字は「客寄せ」に過ぎず、少額両替の観光客からは法外な手数料を巻き上げる手口だったのです。
「詐欺だ! 金を返せ!」
私は取引のキャンセル(Cancel)を叫びました。
しかし、男はマイク越しに冷酷に告げました。
「Transaction is done. No refunds.(取引は完了した。 返金はしない)」
「警察を呼ぶぞ」と脅しても、彼はあくびをして見せるだけ。
彼らは法の抜け穴を知り尽くしており、警察が介入できないことを知っているのです。
分厚いガラスの向こうで嘲笑う男の目。
自分の愚かさに対する恥辱。
そして、なけなしの旅行資金を掠め取られた怒り。
それらが入り混じり、私は拳を握りしめたまま動けませんでした。
結局、私は泣き寝入りするしかありませんでした。
たかが数千円、されど数千円。
このトラブルは、プラハの美しい景色を少しだけ色褪せさせる、苦い教訓となりました。
トラブルに巻き込まれないためにするべきだった行動
現金を渡す前に「この100ユーロで、最終的にいくら手渡されるのか(Net amount)」を電卓で表示させて確認するべきでした。









































