旅行情報

あなたの旅行先の国名・都市名

中国、北京

あなたが旅行に行った年月

2025年7月

あなたが旅行に行った回数

5回目

あなたの年齢、性別、職業

31歳、男性、WEBデザイナー

一緒に旅行に行った人の人数

友人1名(計2名)

トラブル体験をした場所

北京の銀行近くの路上

トラブル内容

これは2025年の7月、猛暑の北京を友人と二人で旅行した際に遭遇した、外貨両替にまつわる痛恨のトラブル体験談です。

ご存知の方も多いと思いますが、2025年の中国は、数年前にも増して徹底した「完全キャッシュレス社会」になっていました。
屋台の肉まん一つ買うのにもスマートフォンが必須で、現金を使っている人などほとんど見かけません。
私たちも当然、渡航前にスマホ決済アプリ(AlipayやWeChat Pay)の準備を完璧にして行きました。

しかし、トラブルは突然やってきます。

旅行3日目の昼下がり、北京の流行発信地である三里屯(サンリーチュン)でショッピングを楽しんでいたときのことです。
突然、私のスマートフォンの通信が途切れ、アプリが決済エラーを起こすようになってしまいました。

さらに悪いことに、予備で持っていた友人のスマホも、猛暑による熱暴走で充電ができなくなるアクシデントが発生。
「これでは水一本買えないし、タクシーにも乗れない」
私たちはパニックになりました。

幸い、財布には日本円の現金が入っています。
これを人民元(現金)に換えれば、とりあえず急場は凌げるはずだと考え、近くの銀行へ駆け込みました。

しかし、銀行は非常に混雑していました。
窓口業務は予約制が基本になっており、飛び込みの外貨両替は「3時間待ち」と言われてしまいました。
外の気温は38度を超えています。
途方に暮れて銀行の入り口で立ち尽くしていたとき、一人の男性が声をかけてきました。

「日本人ですか?
困っているようですね」

彼は30代半ばくらいのスマートな服装で、手には最新のデバイスを持っていました。
非常に流暢な日本語でした。

「実は私、来週から東京の支社へ転勤になるんです。
向こうで使う日本円を確保しておきたくて銀行に来たんですが、この混雑でしょう?
もしよければ、私が持っている人民元と、あなたの日本円を交換しませんか?
お互いに助かると思います」

普段なら絶対に警戒するシチュエーションです。
しかし、この時は「通信障害と熱暴走で詰んでいる」という極限状態でした。

それに、2025年の今、現金を欲しがる中国人がいるという理由も、「海外転勤」という話なら筋が通っているように思えてしまったのです。

「レートも銀行より良くしますよ。
お互いWin-Winですから」

その言葉に甘え、私たちは銀行の死角になる木陰へ移動しました。

私は手持ちの5万円を彼に渡しました。
彼はその場で財布から人民元の新札を取り出し、私の目の前でゆっくりと数えました。
「イー、アル、サン…はい、間違いなく約2500元あります」
確かに枚数は合っています。
新札のピンとした感触も確認しました。
私がその札束を受け取ろうとした瞬間、彼のスマホが鳴りました。

「あ、すみません上司からです。
ちょっと待ってください」

彼は一度渡しかけた札束を自分の手元に引っ込め、電話に出る素振りをしながら、もう片方の手で札束を封筒に入れました。

「急ぎの用事ができてしまいました。
これ、さっき数えたお金です。
封筒に入れておきましたから。
では、良い旅を!」

彼は慌ただしく封筒を私に押し付け、足早に去っていきました。
その封筒を受け取った瞬間、嫌な予感がしました。
厚みが少し違う気がしたのです。
急いで中身を確認すると、入っていたのは一番上と一番下だけが本物の100元札。
その間に挟まれていたのは、なんと「練習用銀行券(練功券)」と書かれた、銀行員が札勘定を練習するための子供銀行券のような紙切れだったのです。

しかも、よく見ると本物の100元札だと思っていたものも、昔の古い紙幣(現在は流通量が減っている旧紙幣)の精巧な偽造品でした。

「やられた…!」

すぐに追いかけようとしましたが、猛暑の人混みの中、彼の姿はすでにありませんでした。
結局、私たちは5万円を失い、手元に残ったのは紙屑だけ。
その後、なんとかスマホの通信が復旧し、ホテルには戻れましたが、失ったお金と精神的なダメージは計り知れませんでした。

キャッシュレスが極度に進んだ2025年の北京では、現金を使う機会が減った分、「現金の真贋を見分ける能力」や「現金を扱う際の警戒心」が私たち旅行者側からも薄れていました。
詐欺師はそこを突いてきたのです。

「日本円を欲しがっている」というもっともらしい理由と、一瞬の隙を作る「すり替え(マジックハンド)」の手口。
便利になった未来の都市でも、人間の悪意やアナログな詐欺手法は変わらないのだと、身をもって知る最悪の体験となりました。

トラブルに巻き込まれないためにするべきだった行動

どれだけ急いでいても、路上での個人間の両替は絶対に避けるべきだった。
銀行の待ち時間が長くても正規の手順を踏むか、あるいは通信トラブルに備えて、出発前の空港で最低限の現地通貨(現金)を用意しておくべきだった。
また、一度相手の手に戻ったお金は、再度その場で数え直すまで信用してはいけなかった。